2006/05/26

イラクは人類の未来を決まる

 イラクでマリキ首相をトップとする新しい内閣が発足しました。イラクで3年あまり続いた混乱が形式的には終了し、イラクに正統政権ができました。イラク戦争はアメリカが入り口を間違えた戦争でした。アメリカが誇る情報収集能力が機能しなかった、あるいは機能させなかったのか、イラク開戦の大儀であった大量破壊兵器はイラクに存在しなかったことが明らかになりました。マスコミはホワイトハウスによる情報操作を追求しています。アメリカ軍の描いたシナリオでは、イラク正規軍を砂漠で壊滅し、市街戦で大統領親衛隊を撃滅するつもりであったと思われます。戦闘を交じえることなくイラク軍が壊走し、ゲリラになるのは想定外であったでしょう。一方、フセイン大統領はアメリカ軍の侵攻はないと確信していたようです。相互が情勢分析を誤っていたので想定外の状況が現出したのでしょう。ブッシュ大統領は保守的なキリスト教右派の信奉者で、ネオコン、新保守主義、言葉を換えればアメリカ至上主義、新たなる選民思想に傾倒しています。ホワイトハウスのイスラム教徒に対する認識に宗教的な偏見があったのは否定できませんが、自爆テロがこれほど続くことを彼らは予測できませんでした。彼らの思想の根本には民主主義が絶対正しく、民主主義を確立し、民主的な政府ができれば総ての国民がそれを支持すると言う思いこみがあります。イスラム教世界に生きる人たちに対し、異なる文化圏に属する人に対する畏敬の念が見られません。グローバリゼーション、世界経済の統合を金科玉条のごとく掲げるアメリカに対し、イスラム教世界がイスラム文化を主張するのはむしろ当然です。アメリカの誤りは民主主義が普遍的な真理であると錯覚したところにあります。
 民主主義は人類に高度成長時代をもたらしたイデオロギーでしたが、21世紀に入り、人類は等比級数的に激増する人口増加に直面しています。資源は限られており、等差級数的にしか増やせません。人間社会は古典的なマルサスの人口論が現実となる世界に入ろうとしています。社会は民主主義に変わる新しいイデオロギーを求めているのです。神様の創造の御業に相応しいイデオロギーがネオコンとは思われないのですが、それに変わる価値観を暗中模索し、藻掻き苦しんでいるのが現実の世界です。日本のバブル崩壊も新しい価値観を生み出すための産みの苦しみであったのかも知れません。ニート、引きこもりなどと言われる人々は旧来の体制に適応しきれない人々であるのかもしれません。地球規模で見れば、世界の資源は一部の先進国に集中しています。その流れが、中国、インド、ロシア、ブラジル、などの新興地域にも広がっています。その流れから取り残された後進国は飢餓や疾病、内戦で疲弊しています。政治のシステムそのものが機能していない国も少なくありません。イラクやアフガニスタンはその象徴なのかも知れません。アメリカだけではなく、世界の国々の未来、大きく言えば人類の未来をかけた大きな実験場なのかも知れません。イラク問題は単なる日本国外の問題ではなく、人類の未来をかけた問題であり、その意味では日本の国内問題にもなるのです。

瀬戸キリスト教会 HP, 西風の会 HP