エネルギー源としての原子力
私は日本の原子力発電所の営業第1号炉、日本原子力発電所浦底発電所の営業開始から、「原子力発電所からの温排水が生物に与える影響に関する研究」をしてきました。
温排水は温泉をイメージすればよいかも知れません。真冬でも排水口に潜れば寒くありませんし、夏は汗をかきます。雪が散ちらつく海面から湯気が上がっている風景は、露天風呂のイメージです。
原電から排出される温排水が生物環境に与える影響は、当初想定されたいたよりもかなり低いと言うことが分かりました。ある研究者は若狭湾全体の生物相が変化すると指摘しましたが、その可能性は無視できうるほど低いと私は考えています。
例えば発電開始当初は、排水口から生物がいなくなりましたが、5年単位で見れば、付着生物相が形成され、海藻類も繁茂し、海中林(ホンダワラ類)も形成されてきます。
その原因として考えられるのは、大量の温排水の放出により、外海からの冷たい伏流水が流れ込んでくることと、温排水が団塊状に流れ、水温の変化が著しいところにあると思います。
従来の主張の根拠は、水温が3~6度昇温することを前提にした、研究室の中での実験結果を基に推定されたものでしたが、温排水が流れ出る水域の昇温は、短期間に変化するものであり、水温を恒常的に昇温させた実験結果とは同一視できないことが分かりました。
火力発電所は熱効率が良く、発電量からすれば温排水の量は少ないのですが、温排水が出ることは原子力発電所と同じで、同様の調査結果が出ました。
文明社会を維持するのにはエネルギー源が必要です。理論的にエネルギー源は熱効率を考慮すれば、廃熱を避けられまえん。また排出され、廃棄される放射能、炭酸ガスをどう取り扱うかも大きな問題です。
原子力発電所は炭酸ガスを排出しない点で、クリーンなエネルギーですが、放射能漏れ、放射能廃棄物は、原電の構造上避けて通れない問題です。化石燃料が高騰しており、エネルギー源に対する安全保障上の問題も避けて通れません。
文明社会を維持するために、エネルギー源に対する国民的な議論が必要ですが、少なくても原子力発電所の安全性を向上させ、炉心溶融事故が起こりえないことを証明できなければ、私たちは安心して生活をすることができません。一度、チェルノブイリ発電所のような炉心溶融事故が起きれば、死の灰が撒き散らされ、日本の機能が停止するからです
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