2006/06/18

村上代表とホリエモンの残した教訓

 村上ファンドの村上代表がライブドアの堀江社長、ホリエモンに続いて逮捕されました。金融緩和の流れの中で、株を武器に一時代を築き上げた二人の逮捕で、兜町も落ち着きを取り戻したかに見えましたが、余震はまだまだ続くようです。二人は金融緩和の流れの中に咲いたあだ花かも知れませんが、日本の金融取引の未熟な点を鋭く突き、あぶく銭を手に入れた手法は鮮やかでした。外資が未成熟な日本の市場を食い荒らす前に、株式市場、経営者に警告を与えた点に彼らの歴史的使命があったのかも知れません。戦後の焼け跡の中にできた闇市で財産を築き上げ、一流企業のオーナー社長となった人たちと大差はないと思えます。
 村上代表の登場は銀行や系列企業で株を持ち合い、サラリーマン社長が絶対的権限を奮っていた日本の会社制度に一石を投じました。村上代表の登場以前は、日本の経営者の視線は株主の方を向いていませんでした。彼らは株主でもないのに会社を自らの所有物のように錯覚していたのです。そこに村上代表が株主の権利を主張して登場したのです。彼は会社の資産に対し株価が相対的に安い企業の株を買い占め、物言う株主として、会社に株主に対して利益を還元するように迫りました。企業は株主対策として特別配当などをせざるを得なくなり、株価が上昇し、買い占めた株を高値で売却した村上ファンドは膨大な利益を得ました。
 村上代表が出現する前の日本の企業は、株主を単なる投資家ぐらいにしか認識していませんでした。株主総会に2~3時間もかかればニュースになるぐらい、株主の権利は無視されてきました。バブル崩壊で銀行が不良債権を積み上げ、優良企業の株さえ手放さざるを得なくなったので、一般株主の発言権が相対的に増してきました。株価は低迷を続け、会社の資産と株価とが釣り合わない企業が出てきましたが、そこに目をつけたのが村上代表です。彼は経済産業省でM&A、企業の合併・買収に関する法律を作成した官僚でしたが、官僚の世界に見切りをつけ、村上ファンドを旗揚げしました。逼塞感の漂っていた経済界には村上代表に期待する人たちも多かったようです。福井日銀総裁も、当時は民間人でしたが、彼に期待した一人でした。彼を支持した財界人も少なくありませんでした。村上代表のファンドを立ち上げた当時の理念を評価する人は多いのですが、インサイダー取引で利益を上げるようになっては、ただの総会屋と変わりはありません。
 村上代表はホリエモンを利用してライブドアのフジテレビの乗っ取り騒動に紛れて膨大な利益を上げました。主役はホリエモンでしたが、脚本、演出は村上代表のようであったようです。この二人に代表されるような新しいビジネスが日本でも起きてきました。世論を巻き込み株価を左右する手法は、個人投資家を増やし、デイトレーダー、一日に何回も株取引をする人を増やしました。インターネットで株の取引も気軽にできるようになり、学生でも億万長者になれる世界を創り出しましたが、ハイリスク、ハイリターンの世界に日本人は馴染めないようです。金融の世界では日本は後進国で、彼らの登場が良い刺激を与えられれば、禍転じて福となるのかも知れません。