2006/07/11

終身刑を創設せよ 

 広島市の小学高1年生、木下あいりさんに性的暴行を加え、殺害したペルー国籍、マヌエル・トーレス・ヤギ被告に無期懲役の判決が下されました。
 この裁判に際し、小林さんの父親があいりさんが性的暴行を受けた事実を、実名で公表することを報道機関に要請しました。
 報道機関は児童が性的虐待を受けた事件の詳細な報道を自粛していますが、父親が事実を世間の人に知ってもらい、死刑判決の正当性を理解してもらいたいと訴えたのです。
 さらに今回の裁判を裁判所も裁判員制度のモデルケースと位置づけ、公判前整理手続きを採用し、5日間連続して開廷し証拠調べを終えました。初公判から50日目で判決公判を迎えました。
 裁判の焦点は、ヤギ被告に死刑が言い渡されるか否かにありましたが、両親の期待に反して無期懲役の判決が言い渡されました。
 判決では、ヤギ被告が「悪魔に乗り移られた」と不合理極まりない責任転嫁をしたと断罪されましたが、被害者が1人であったこと、前科がないことを理由にして死刑判決が避けられました。 
 性的暴行は女性にとって命を奪われるようなものだと訴え、あいりは二度殺されたと主張し、死刑を望んだ父親の願いは適いませんでした。 
 今回の裁判では、最高裁の判例で死刑の基準として9項目が示されていますが、下級審が児童に対する性犯罪の対応に戸惑っているのを感じさせられました。
 公判前整理手続きが採用されたので、検察側がヤギ被告が母国ペルーで女児に対する性犯罪で2度告発されているのを立証する時間がありませんでした。控訴審ではさらに審議が尽くされるでしょう。
 無期懲役の判決には、仮釈放を禁じる裁判所の意向も加えられましたが、制度として終身刑のない日本では、ヤギ被告が社会に復帰する可能性が残ります。
 性犯罪は再犯性が高いと言われていますが、精神医学的に見れば精神病の範疇に入る人も多いと思います。
 性犯罪を犯した者に対しては、医療刑務所での治療だけではなく、医療観察法による保護・管理がなされなければならないような時代になってきたのかも知れません。
 少なくとも、殺人を犯した性犯罪者に、社会復帰の道を残す無期懲役刑には、疑問を感じざるを得ません。
 死刑と無期懲役の間に、ヨーロッパのように終身刑を創設する必要があると思います。今回のようなケースのように、死刑が躊躇われるのならば、終身刑を言い渡すべきです。
 裁判員制度が始まれば、裁判官ではない市民が、死刑の是非を判断しなければないケースが出てきます。市民に人の生死を判断させるのは、過重な負担であると思えます。
 終身刑があれば、死刑反対論者も納得することができ、市民も死刑を宣告した重荷を負わなくて済みます。
 死刑判決が増加してきましたが、終身刑があれば、裁判所の裁量の範囲が広がります。
 さらに、無期懲役の者が仮釈放されて、凶悪な犯罪を引き起こすケースも防げるでしょう。