2006/07/11

行政の善意は慎重に

 社会保険庁が国民年金の支払い免除申請を違法、不適切に作成した件数は20万件を超えました。社会保険庁は民間から招いた長官が国民年金の徴収率を上げるようにノルマを課したのに対して、分母にあたる支払い免除者数を減らす事により徴収率をかさ上げしようとしました。
 先ず、民間企業ならばノルマを課せられるのは当たり前のことで、それを小手先の書類操作で達成しようとした社会保険庁の職員の行為は、公務員に科せられた職務専念義務違反です。責任者は懲戒処分を受けて当然です。
 国民年金の未払いが社会問題化した時に、大勢の職員が政治家や有名人の個人情報にあたる原簿を不法に閲覧し大量処分がなされたのにも拘わらず、またこのような違反行為が社会保険庁で平然となさたことは、社会保険庁を抜本的に変える必要性が国民の前で明らかにされました。
 社会保険庁の職員は国民年金の徴収率を上げるために本当に努力したのでしょうか、疑問に思えます。小泉改革で長官が民間出身者に変わり、職員の中に組織的なサボタージュをする気配があったようにも報道されています。  
 役人の世界では机の上で書類さえ書いていれば仕事をしたことになり、地道に外回りをして仕事をすることを避ける傾向があります。おそらく、未納者に個別に当たり支払いを督促することしないで徴収率を上げる手段として、違法な手段を考え出したのでしょう。
 報道によれば、本庁から指示が出た可能性が高いようです。組織的なサボタージュ、さらに違法な書類を作成したことで社会保険庁は解体的な出直しを求められますが、身内のかばい合いにより構造改革が頓挫する可能性も想定されます。
 職員は本人にも利益になるのだから、行政の善意で申請したと言い逃れるつもりだったのでしょうが、行政の善意は違法な申請までも合法化するものではありません。さらに個人情報保護法にも明らかに違反している行為です。
 行政の善意は役人の世界では常識でした。またそれが必要な場合も多くあるのもまた事実ですが、個人情報保護法が施行され個人情報に対して国民の目が厳しくなっている現在、役人の世界にも意識改革が必要です。
 障害者自立支援法が施行されましたが、現場では申請書類の山を抱えて安易に申請書が作成されています。例えば私は通帳のコピーを提出させられましたが、これなどは明らかに行政の行き過ぎです。
 しかし、「この子を残して死ねるか」と言っていた精神障害者の親自身が介護保険の対象になる年齢に達したので、行政の善意で書類を作成せざるを得ない現実も考慮しなければなりません。
 行政は個人の基本的人権を保護する方向で、介護保険制度の見直しをしなければならないと思います。先ず、介護保険制度に携わる職員に個人情報を取り扱う者としての自覚を促し、必要な研修を十分に受けさせるべきです。
 介護保険の導入は、行政サイドに十分な準備が整う前に導入されました。介護保険の対象者から見ても、拙速だと言う感じがします。
 突然自己負担が導入され、施設にも利用者にも制度に適応するための準備期間が全くありませんでした。突然自己負担分を請求され戸惑っている人も多くいます。
 障害者自立支援法は3年後に見直されることになっていますが、自己負担が過重になる利用者に対して何らかの軽減措置が執られるべきでしょう。